テロリストに何も与えてはならない、名前もだー岸田首相襲撃に思う
目次
岸田首相襲撃、テロが連鎖した可能性
岸田文雄首相が15日、衆院補選の遊説に訪れた和歌山市内の漁港で、演説中に爆発物を投げ込まれた。岸田首相にも、聴衆にも、ケガ人がいなかったのはよかった。安倍元首相の暗殺事件から1年と経たず、今度は現職首相が選挙運動中に狙われた。
動機は不明だ。ただし、この問題で私の予想が当たってしまった可能性がある。テロが連鎖しかねないということだ。
安倍晋三元首相の昨年7月のテロの後で、日本のメディアと立憲民主党、共産党などの野党勢力が、殺人犯の主張を拡散した。犯人は、某宗教団体への恨みから、安倍さんを狙ったと言った。安倍さんはその関連団体のNPOのウェブシンポジウムに1回出て、アジア・太平洋の平和を語った。確認できる関係はそれだけだ。ただの逆恨みである。
ところが、メディアと野党などの一部勢力は、その宗教団体と自民党の関係を大々的に騒いだ。そして自民党政権も行政も、それに影響を受けて、同団体の締め付けに動いた。違法性による解散の調査、カルト宗教規制法などだ。
これは危険だ。
テロを成功させ社会を壊す人たち
「テロ」を、警察は次のように定義している。
「広く恐怖又は不安を抱かせることにより、その目的を達成することを意図して行われる政治その他の主義主張に基づく暴力主義的破壊活動」(警察庁組織令39条)
つまり政治上の主張という目的を持ち、それを達成する暴力行為がテロである。安倍氏の暗殺事件ではその政治主張の達成を成功させてしまった。岸田政権、そして日本の政治家も行政も一部政治勢力もメディアも、犯人の政治主張を認める形で「成功」させた。健全な日本国民の大勢は安倍氏の死を追悼していたにもかかわらず、ノイジーマイノリティが状況を引っ張ってしまった。
この成功体験に加え、安倍氏のテロを行なった殺人犯を賛美する人、その人殺しへの好意的な物語を流す人がいた。。
テロの成功、そして実行犯への賛美。最近のイスラム原理主義者のテロから、日本の1930年代の右翼テロで見られるように、こういう状況ができると、テロは連鎖してしまう。もしかしたら今回の岸田首相へのテロは、前の安倍氏へのテロからつながっている可能性がある。
背景の解明? 今のメディアは煽るだけ
「テロリストが犯行に至った背景を解明するのも大事」という意見はあるだろうし、それは確かに必要だ。しかし、それは客観的な、突き放した描写による報道によって行われるべきである。日本のメディアは、そうした冷静な報道はしていない。安倍首相暗殺犯に同情的な情報を垂れ流した。賛美するような会社もあった。私の見た限りでは、毎日新聞と東京新聞はひどかった。
最近の自殺報道は変わった。厚生労働省、世界保健機関(WHO)がメディアと自殺の関係を調べ、報道が誘発するということを繰り返し批判した。メディアもそれを受け入れ、扇動的な報道をしなくなった。連鎖は止まったように見られる。(厚生労働省「メディア関係者の方へー自殺報道へのお願い」)
ところがメディアはテロリズムでは、危険な煽る報道をしている。テロリズムの拡散の恐ろしさを理解していないようだ。こんな報道をする彼らを信用できない。
世の中の「不安」や「失望」が、テロを生む。それを是正しろという、変な言説がある。それらはどんな時代もどの国にもある。手間のかかる是正の取り組みを民主主義の枠内でしないで、それを暴力で解決するというのはただの甘えだ。
テロの連鎖を止めなければならない。そして、社会の安定性や安全性を破壊する。安倍首相の暗殺を「世直し」と喚いた宮台真司氏が、動機不明だが見ず知らずの男に昨年11月に襲われた。もしかしたら、宮台氏の行為は暴力の垣根を低くしてしまったのかもしれず、自分が襲われた遠因になったかもしれない。この例のように、テロの広がりは社会の安定性を壊し、そして自らの危険も招くことになる。
テロリストには何も与えるな
私たちがすべきことは、テロリストの行動を無意味にすることだ。主張を広めてはならない。黙殺、無視することだ。日本のメディアにテロをいじらせたら、何をし始めるかわからない。狂人に刃物を持たせるようなものだ。だから私たち一般の、健全な日本国民が、テロを黙殺して付け入る隙を与えない態度を示さなければならない。
幸にして日本の世論は賢明だ。メディアや一部勢力が安倍氏暗殺犯を賛美したことに、大変な批判がある。テロリストの主張を無批判で伝える人間、報道機関があったら、その行為を徹底的に批判すべきであろう。
毎日新聞が、テロリスト重信房子を賛美する記事を昨年12月に出した。(後ろに批判した私の論評をリンク)外国からも批判を受ける事態になり、同社は萎縮をしたのか弁明記事を出し、続報を出さなかった。同じように、テロを肯定するメディアは、正当性のある世論の力によって屈服させられることができる。
ニュージーランドは2019年に、イスラム過激派のテロに直面した。ジャシンダ・アーダーン首相(当時)は、議会演説で犯人の名前さえ呼ばなかった。そして次のように話した。「ニュージーランドは犯人に何も与えない、名前もだ」「むしろ命を奪われた人たちの名前を呼ぼう」。(NHK記事)私はこの考えに同意する。
残念ながら、岸田首相は、安倍氏へのテロリストに毅然とした態度を示さなかった。自民党も政府もそうだった。しかし、態度を改めてほしい。
岸田さんは襲撃の後に遊説を止めなかった。テロに屈しなかった。その勇気を讃えたい。そして、その考えと態度を続けてほしい。テロと戦う決心を持ったと信じたい。
私たちは、動機解明以外に、岸田首相を襲い、一般市民を傷つけかねなかった男の発言は無視しよう。その行動を賛美する人やメディアを徹底的に批判しよう。そうした人はテロリストの同類である。こうした行為が社会の安全、民主主義を守ることにつながる。
石井孝明
経済記者 with ENERGY運営
ツイッター:@ishiitakaaki
メール:ishii.takaaki1@gmail.com
注・私は、すでにこの自分サイトwith ENERGYで、安倍氏へのテロをめぐり以下の記事を書いている。ご一読いただければ幸いだ。
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1 件のコメント
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テロリストに名前を与えるなと言う考え方に非常に共感しました。
山上が英雄視され、人の命を奪った事さえ礼賛されている状況が大変怖くてなりません。
テロリストを称賛すると言う事は、自分の主義に合わない人は殺しても構わないと言う世界を望んでると言う事ですから。
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