テロ組織クルド労働者党(PKK)、指導者が解散声明ー埼玉クルド人問題への影響は?

ジャーナリスト

トルコからのクルド人国家の分離独立を目指して、武装闘争を続けてきたテロ組織クルド労働者党(PKK)の指導者アブドラ・オジャラン受刑者が、2月27日にPKKの武装闘争を停止し、その解散を呼びかける声明を発表した。またPKKは1日、この声明を受けてトルコ政府と停戦する方針を発表した。

トルコに平和が訪れることを期待したい。またこれに関係して埼玉クルド人問題が解決することも願う。しかしPKKとトルコ政府の和平交渉は過去にも失敗しており、どのようになるかは現状では不透明だ。

(写真1)PKKの旗が掲げられたネウロズというクルド人の祭りで踊るクルド人たち。2023年埼玉県立の秋ヶ瀬公園で行われた。県民の提供映像から

「PKKは解散しなければならない」オジャラン受刑者

トルコのクルド系政党で人民民主平等党(DEM)の議員らがイスタンブールで会見を開き、この声明を発表した。オジャランはクルド人アイデンティティの否定の解消がトルコの政策で進み、言論や政治自由が改善したため、トルコとクルドの同盟を再構築し、民主的手段を用い、武装闘争をやめて「PKKは解散しなければなりません」と述べている。(声明の翻訳はこちらにまとめた。)

オジャランは1978年にPKKを創設し、マルキシズムや毛沢東の革命理論を採用し、武装闘争を指導した。これまでのPKKの武装闘争やテロによるトルコ国民の死者は、累計で約4万人になるという。オジャランは99年にトルコ諜報機関によってケニアで拘束され、国内に連行されて死刑判決を受けた。しかし政府が2004年に死刑制度を廃止したことから、終身刑に減刑されて現在は服役している。

クルド人は国を持たない最大の民族とされ、トルコ、シリア、イラン、イラクの国境地域に約3500万人居住している。どの地域でも分離独立を目指し、迫害を受けてきた。もちろん各国政府にしたらそれは「取り締まり」「治安維持活動」であろう。

PKKは1990年代に一時壊滅状態になったが、欧州の麻薬ビジネスに関与し、その収益を得て勢力を盛り返した。また世界各国からのクルド人移民・難民からの献金もそれを支えた。さらにI S潰しのために、米国がシリアでクルド系武装組織を支援し、それがPKKと連動した。そのためにトルコはシリア北部に侵攻して、米国と関係が悪化している。クルド人とトルコ人の関係の歴史は省略する。

米、英、EU諸国はPKKをテロ組織と認定している。日本は外国のテロ組織を取り締まる法律がない。しかし国連決議に基づきPKKをテロ組織と指定し、資産凍結措置を行っている。

解散の要請の背景、40年の闘争によるトルコの疲弊

今回は、トルコの保守派議員などの調停工作に、エルドアン政権、そしてオジャランが乗った。エルドアン大統領が動いたのは、いくつかの理由があるようだ。第一の理由は昨年12月の隣国シリアのアサド政権の崩壊だ。北東部の部族連合のシリア民主軍(SDF)は政権を打倒した勝者側の立場になり、その中のクルド人部隊の人民防衛隊(YPG)はPKKと一体になって動いているとされる。SDFに米国は援助をしている。この勢力拡張を止める意図がある、

第二の理由は、経済の状況だ。経済危機に見舞われるトルコにとって、PKKとの戦闘は国の財政、国際的な信用を揺るがしている。

第三の理由は、エルドアン政権の行く末だ。大統領は71歳。2028年に行われる大統領選挙には立候補しない可能性がある。ただし彼が進めたイスラムの慣習を取り入れ、中東との関係を強化するに国の政治・外交の変革は、厳密なトルコの政教分離を掲げるケマリスト、EUとの協調を進めようとする人々から常に批判を受け、脆弱なものだ。与党公正発展党(AKP)は国民の2割を占めるクルド人への配慮を続けてきた。その政権継続にはクルド人の取り込みが必須だ。

しかし和平が実現するかは不透明だ。オジャランは2015年にも武装闘争の放棄を呼びかけたが、それは実現しなかった。また組織を離れて25年以上が経過して、その影響力も限定的と見られる。さらに、シリアのYPGなどは彼らの利害で動き、PKKと同調するかは不透明だ。

また私は埼玉クルド人問題、また日本でのPKKの活動を報道をしたことから、トルコ人から意見が示される。2023年5月からSNSのダイレクトメッセージやEメールで、500通にもなる。その大半で表明されたのは、PKKへの憎しみだ。それはトルコ国民が民族を問わずに抱いている。

埼玉クルド人問題、偽装難民の主張がまた疑わしくなる

このPKKの問題は、私が関係する「埼玉クルド人問題」に関わる。埼玉に集住し、日本人に迷惑をかけているトルコ国籍のクルド人の大半は、自分たちがトルコ政府に迫害されていると嘘をつき、出稼ぎ目的で日本にいる。オジャランの声明で、クルド人が日本にいる正当性はまた失われる。彼は声明で、トルコでクルド人の人権状況が改善し、言論の自由も広がったと述べている。

在日クルド人は、心情的にはPKKを支援している人が多い。しかし自分の出稼ぎがしづらくなるので、PKKを批判する人もいて、一枚岩ではない。トルコ政府は、日本クルド文化協会(埼玉県川口市)など2団体、在日クルド人6人を、テロ組織関係者として資産凍結措置を23年11月に行っている。

(写真2)テロ組織PKKとオジャランの旗の前で支援のポーズをさせる在日クルド人の親、その姿は異常だ

在日クルド人と、またその取り巻きの日本人の数名はSNSで情報を発信している。このPKKの武装闘争の停止宣言を受けても、「トルコ政府が信じられない」と繰り返している。このオジャランの動きに関係なく、日本に居着こうとしている。

私たち日本人は、彼らに「トルコに平和が訪れる可能性が高まり、君たちクルド人がここにいる理由がまた無くなった」と指摘し、トルコへの帰還を促すべきであろう。

2月末の日本の国会審議で、日本政府は不法滞在者として退去強制(強制送還)手続きを受けている主にクルド人と見られるトルコ国籍者は1098人(2024年末時点)いることを初めて明らかにした。そして25年度補正予算案に8300万円の強制送還の手続き費用を計上していることも公表した。「埼玉クルド人問題」への厳しい世論で、ようやく政府が動きつつある。このオジャランの声明とPKKの活動停止も、彼らをトルコに送還する理由の一つにし、埼玉クルド人問題の解決に繋げる必要がある。

トルコ人への日本からのメッセージ

私はトルコのメディアのジャーナリストから、この問題へのコメントを求められた。問題を考える一助になると思うため、最後にその要旨を示しておこう。

「私は日本人であり、トルコ国内での政治問題について、共和国政府と国民の民主的な決定を評価する権利を持ちません。トルコ国民には、民族的にトルコ人であろうと、クルド人であろうと、友好国の友人として常に敬意と親しみを抱いています。

私はトルコ国民のどのような決定も尊重します。しかし日本から見ると、トルコは経済、政治に大きな可能性を秘めた国なのに、PKKとの40年間の無駄な争いで、国力が疲弊していたように思います。この問題が平和的に解決すればトルコは再び発展するでしょう。トルコ人、クルド人を含めたトルコ共和国とその国民を尊敬する日本人として、私は平和的解決を期待します。

PKKとの闘争による4万人のトルコ国民の死への怒りと悲しみは当然です。それをどのように捉えるか。これは難しい問題です。トルコ国民が、この死の意味を自ら考え、解決するべき問題でしょう。参考までに日本の状況を紹介します。日本では、今でも第二次世界大戦の死者の意味を問い続けています。日本人の多くは、その犠牲の結果、今の日本の平和が作られ、今を生きる日本人は平和を維持する責任があると考えています。外国への憎しみを放棄しようと努力をしています。

日本とトルコには、トルコ国籍のクルド人の偽装難民の問題があります。そのクルド人たちの多くは、トルコに迫害されると嘘をついて難民申請をし、日本の埼玉県に滞在しています。そして犯罪、迷惑行為によって日本人に迷惑をかけています。

オジャランの声明で、彼らの主張の正当性がさらに失われることになるでしょう。私は平和になったトルコに、彼らはいますぐ帰るべきだと思います。また彼らにクルド民族への愛があるなら、祖国に帰って、国づくりのために働くべきです。トルコ国民も私の主張、また在日クルド人の帰国事業を支援してください。

日本とトルコは経済協力協定(EPA)の交渉をしています。在日クルド人問題が、問題になって進んでいません。もしこの問題が解決したら、またトルコに平和がもたらされたら、その交渉は進み、両国関係はさらなる発展を遂げるでしょう。日本国民はトルコとの友好が深まることを望んでいます。

石井孝明
経済記者 with ENERGY、Journal of Protect Japan 運営
ツイッター:@ishiitakaaki
メール:ishii.takaaki1@gmail.com

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1 件のコメント

  1. 浩沼静夢 より:

    日本国内のPKKは止まらないでしょうね・・・あいつら中核派と連合軍になってますし中朝系の反日勢力とも繋がってますから。

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