共生の意思がない外国人と街づくりはできない-奥富川口市議に聞く地域の疲弊(下)

ジャーナリスト

埼玉県南部では外国人をめぐり何が起こっているのか。「奥富川口市議に聞く(上)クルド人問題、住民の不安を聞いてほしい」に続き、下では自治体の街づくり政策への影響、そして問題解決の方法を考える。

奥富川口市議会議員は、治安を中心にクルド人問題への対応が不徹底であることに、住民の不満がたまっていると指摘。それによって、行政や警察、入管への信頼が埼玉県南部で壊れつつあるという。しっかりと法を適用し、問題外国人の数を減らし、特別委員会を作るなどして行政の横断的な同時対応を行うアイデアを述べた。

(写真4)奥富精一・埼玉県川口市議

広がる治安対策への不満

―埼玉クルド人問題では、さまざまな分野で問題が発生しています。特に彼らの運転する車「クルドカー」の危険運転への不安と恐怖は、住民から消えていないようです。暴走車は命に関わります。

クルドカーの問題は悪化しており、死亡ひき逃げ事件が起きてしまいました。24年9月に川口市内で、クルド人少年のひき逃げ死亡事故で17歳の日本人少年が亡くなりました。今年2月には、クルド人運転のトラックと、ワゴンカーが衝突し、乳児が重体になっています。飲酒運転の中国人による死亡事故も昨年9月に川口市内で発生しました。

警察のパトロールは、以前よりも増えました。しかし日本の警察は人権に配慮し、また外国の警察と違って紳士的で、外国人にも日本人にも威嚇的・暴力的な対応をしません。そのためなのか、クルド人は日本の警察を怖がりません。また警察に歯向かうことをかっこいいと勘違いしている人も、彼らの中にいるようです。クルドカーについて、積極的に取り締まってほしいとの県民の声は広がっています。

―埼玉県民の間で、埼玉県警はクルド人・外国人に対する犯罪捜査、事前抑止の動きが鈍いと批判されています。

警察の皆さんは、日々の仕事に頑張っています。ただし川口市民、埼玉県民の皆様の間に、治安と警察の活動に対する不満が広がっていることは確かです。さらに情報が公開されないために、不信と不安が、地域社会に広がっています。

治安問題では、情報公開の方法を改善してほしいです。残念ながら、川口市は治安がそれほど良いところではありません。埼玉県警が、メールやSNSで、「ナイフを持った男が徘徊している」「喧嘩があった」などの防犯情報を頻繁に流します。ところが外国人の疑いがあっても、それを広報しません。25年2月に川口市内の私の近所でクルド人が、別のクルド人の家にナイフを持って押しかけようとした事件がありました。24年の夏には、市内でクルド人らしい男たちが乱闘をしました。目撃者の情報があるのに、県警は外国人と広報しませんでした。犯罪者が逃走している時など、外国人であるかを言わなければ住民の安全確保に役立たないでしょう。理由を教えてくれません。

また24年3月には、婦女暴行事件で逮捕されたクルド人が不起訴になりました。理由と事後処理が公開されていません。クルド人に限らず、埼玉県内で外国人が起こした事件が頻繁に不起訴になり、理由と結果が公表されません。犯罪者が野に放たれることは、県民として恐ろしいです。正確な情報が公開されないと、地域の不安は高まる一方です。

地元選出の新藤義孝衆議員議員、また同僚の川口市議らと、警察に取り締まり強化、情報公開を何度も要請しています。警察・検察がもう少し積極的に外国人犯罪への対応に動いてほしいと思います。

国は外国人への対応を自治体に丸投げ

―街づくりでは、外国人、クルド人の存在はどのような影響があるのですか。

外国人で積極的にまちづくりの参加する人は少ないです。そしてクルド人の場合には、住民登録もなく、法的立場が曖昧です。実数も、居住実態も正確に行政が把握できていません。

そうした状況なのに外国人の存在は、行政のさまざまな取り組みに影響します。私は市議会の保健福祉委員会に属しています。そこで23年度に川口市立医療センターの外国人の未払金は23年度に1億2000万円になり、24年度にはさらに増える見込みです。国民健康保険に入っていないため、支払額が高額になり督促しても、そのまま逃げてしまうためです。このままでは市営病院の経営は危機に陥るでしょう。なんとか止めたいのですが、人道上診療を拒否することはできず、市議会も、市当局も病院も困っています。こんな問題が、いろいろな分野で外国人に関係してあるのです。

これまで述べたように、一部の外国人、クルド人には、日本人と共生する意思は見受けられません。さらにクルド人は法的地位が曖昧です。彼ら自らも、いずれ本国に帰る意向の人が多いようです。実際に頻繁にいなくなり、どこに行ったのか分かりません。まちづくりに参加する意思もないのでしょう。

このような人たちと一緒に街づくりをしようとしても、実際に行うのは難しいです。あらゆる分野で、外国人の動きが読めないために、計画も立てられない状況です。

―国は外国人の街づくりの参加、生活への対応について、何もしないのですか。

今の政府は、外国人政策を地方自治体に押し付ける一方です。紙切れ一枚の通達で、予算措置がない政策もたくさんあります。外国人の居住、外国人労働者の数を国が増やしているのに、自治体に任せきりです。

外国人を増やすなら、国が主導して、制度、予算措置を作ってほしいです。そして自治体関係者、地方政治家に呼びかけたいのは、自治体における「外国人との共生」と言う理想と、現実の間には必ずギャップが生じると言うことです。国の政策で外国人労働者の受け入れは今後拡大するはずです。日本のどの地域でも、今から自らの住む街で、外国人を巡る対応が必要になっていくでしょう。

私は自民党員です。自民党は国民の声を聞いて政策に生かし、支持を集めてきた政党です。外国人問題をめぐる国民の声を聞かない、対応が遅れがちの状況は、本当におかしいと思います。

(写真7)川口市内の公園にあった、放尿を止めることを求める立て看板。クルド人の子供が、公園を汚すことが問題になっている。(25年3月、筆者撮影)

善意からだった川口市の「多文化共生」政策

―川口市の対策に問題はなかったのでしょうか。「外国人に住みやすい街づくり」という奥ノ木市長の政策が、外国人問題・クルド人問題の原因になりませんでしたか。

川口市のこれまでの対応について、多くの方に批判をいただいています。私も市政に議員の立場から関わるものとして、不信や批判を受け止め、申し訳なく思います。ただし弁解に聞こえてしまうかもしれませんが、外国人問題は、担当する官庁が、国、県、それぞれの市町村に分かれ、市の権限でできることは限られるのです。外国人が入国、日本国内に居住するかどうかを決めるのは国の政策です。

現在の少子高齢化、そして全国の自治体の競争の中で、奥ノ木市長が、「外国人に住みやすい街」をPRして、市の発展を考えたことは、理解できることです。またその政策は、みんなで幸せになろうという善意からのものでした。市議会から見てその政策に私は感銘を受けましたし、心から賛成しました。もともと住む外国人の皆さんに、この政策は歓迎されました。そして、それは市の経済や税収にプラスになることもありました。

ただしマイナスの面が顕在化していることは事実で、それを是正のために今、奥ノ木市長も、市も苦しんでいます。甘さがあったという批判は、受け止めなければいけません。

対策の一つとして、川口市は騒音や振動、不法投棄ヤード(資材置き場)の規制を強化する条例を検討しています。クルド人の大半は解体業に関わりますが、そこが問題を起こしています。市議会自民党も、その条例作成に協力する予定です。

条例違反の罰則はこれまで「30万円以下の罰金」となっていますが、新条例案では「1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」と厳しくしています。ヤード運営の条件も厳しくしています。条例で、拘禁刑が導入されるのは全国で画期的なもので、クルド人問題の解決に役立つことを期待しています。

―昨年末から、クルド人の一部に強制退去命令が出ているようです。強制送還は進んでいますか。

命令が出ていることは、私も聞いています。しかしクルド人全体がはっきりと減っている印象は現時点(25年3月)では受けません。また川口以外の場所、例えば隣接するさいたま市や越谷市でクルド人と住民のトラブルが発生しています。問題が埼玉県南部に広がっています。川口では批判が強くなったため、ヤードを別の場所に作り、その周辺に住み始めたのでしょう。そうした場所の地方政治家、住民の方から川口の先例を聞かれます。しかし川口でも解決をしていないので、解決策を示すことはできません。

入管は送還の通知だけではなく、実際に強制送還をしてほしいです。国会審議で、石破茂首相が2月にクルド人問題について聞かれた時に、クルド人とは言わなかったものの「ルールを守らない外国人とは共生できない」と、明言しました。かなり踏み込んだ発言です。また鈴木馨祐法相も国会審議で3月に、補正予算で対応して、クルド人を含めて不法滞在者の強制送還を進める方針を示しました。強制送還は、市役所、市議会では手がつけられない問題なので、ぜひ国で進めていただきたいです。

これによって、クルド人の側から、これまでと違った動きが出ています。一部地域で町内会活動に参加するようになりました。清掃活動に参加することもあります。私たちが、ゴミ捨て、騒音などで要請すると、それをクルド人の別の人に伝えることもあります。これまでそのようなコミュニケーションはなかったのです。

クルド人から歩み寄りの動きが出たが…

―それは良い動きではないでしょうか。

クルド人コミュニティ全体が、日本人と協調する動きに発展することを期待したいです。ただし、いつもの通りクルド人の中には、打算的で、おかしなことをする人もいます。仮放免者(送還前に一時的に施設外に居住している人)が、町内会の清掃活動に出た後に、町内会長や町会の人に、送還をしないように署名を求めようとした例を何件か聞きました。応じないと、その後の活動には来なくなったそうです。素行が良いと送還されないと、誰かが入れ知恵をしたのでしょう。しかし、掃除と署名で、送還されなくなるとは思えません。

また私の近所のクルド人なのですが、SNSで匿名アカウントを作って、私や日本人を批判しているらしいのです。その人も、急に町内会活動を急に始めました。バレないと思っているのでしょうか。変わった人たちです。

これまで一部のクルド人が、町内パトロールや駅前を掃除することもありました。彼らを支援している日本人とメディアがついて周り、「クルド人は日本に馴染もうと努力している」と喧伝しました。ところが彼らはクルド人が問題を起こしている場所でやりませんでした。クルド人同士は仲が悪く、注意をすると争いが始まってしまうので、問題のない場所で、意味がないPR用の清掃やパトロールをしているようです。そしてその取り組みも時々しかやりません。このように地元民から見ると誠実さを疑ってしまうクルド人の行動が、頻繁に見られます。

官庁横断的な対策チームの創立が一案

―解決のために何ができるでしょうか。

政治家として日々感じることですが、日本の公的機関も政治家も権限が小さく、またそれが官庁、国、県、自治体で分割され、できることが限られます。これは公権力による人権侵害や横暴を避けられる反面、大きな問題で行政の動きが鈍いことの理由になっています。

クルド人・外国人に特化した法律や制度を作って、取り締まりや問題解決をするのが理想です。しかし、それには手間がかかります。一つのアイデアですが、クルド人・外国人問題をめぐる特別委員会を立ち上げ、政治家がそれに関与して、現行法でできることを各機関で同時に、協力しながら一度にやる方法はどうかと考えています。複数の自治体、官庁、政治家が定期的に集まり、問題を洗い出し、協力し、同時に対策を行い、実行を管理するのです。これまで、それぞれの官庁がバラバラに行ってきました。

まだ勉強の段階ですが、映画「シン・ゴジラ」(2016年)で出てきたゴジラ対策の国の特命チームのような形があり得るのではないかと思います。実際にそういう例は行政でいくつもあります。市役所よりも権限のある、県、国などが中心になってそうした委員会を作ってほしいのですが、なかなか動きません。

―日本中に、川口市、埼玉県の外国人問題、クルド人問題の解決を求める声が広がっています。

そうした声援と応援は大変ありがたいです。世論の後押しのおかげで、孤立無縁の状況からほんの少し状況は動きました。地方議員は、地に足をつけてずっと地域と向き合う仕事です。私は川口市民、埼玉県民として問題解決に最後まで向き合います。

望んでなったことではないですが、川口市と埼玉県南部は、これから外国人が大量に住む日本の「課題先進地域」になってしまいました。埼玉クルド人問題と外国人問題を解決し、外国人と共に暮らす街の日本でのモデルケースを作る意気込みで、危機を転じて良い結果に変えたいと思っています。

石井孝明
経済記者 with ENERGY、Journal of Protect Japan 運営
ツイッター:@ishiitakaaki
メール:ishii.takaaki1@gmail.com

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2 件のコメント

  1. ダイ より:

    素晴らしい取材と取り組み。NHKのクソ偏向報道はなんだったんだろう

  2. 米島弁 より:

    私が聞いた話では、大手警備会社で川口や蕨からの問い合わせの数が他の地域の7~10倍と突出していて、同エリアの営業職は大忙しだとか。実際、街を歩いていると、私の旧友宅を含め、防犯カメラや警備装置を導入した住宅が増加傾向で、治安対策への不満や不安の広がりを感じます。無論、一部防犯カメラの設置に市が補助金を出す等、支援もありますが、国境で止めるべきものは、家や敷地の境界ではなく、国境で止めて欲しいです。

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