クルド人問題に揺れる埼玉、参院選で何が起きたか

目次
史上初、外国人問題が選挙の争点
今年7月に行われた参議院選挙で「外国人問題」が日本の憲政史上で初の争点になった。一部在留外国人の違法行為が社会問題になり、対応の遅れる政府への批判が広がった。特にトルコ国籍のクルド人と住民の摩擦が深刻になっている埼玉県では、政権与党自民党への批判が著しく、参政党の伸長が目立った。
私は川口市、そしてさいたま市の大宮区を参議院の選挙中の7月に歩いた。JRのいずれの駅前でも参政党のボランティアがビラを配っていた。新興政党なのにその組織力が印象に残った。
大宮駅前では公明党の候補が演説をしていたが、動員されたと思われる女性たちも含め平日であったが50人程度しか集まっていなかった。「外国人を埼玉に入れるな」とヤジを飛ばす通行人もいた。同党は外国人に親和的と見られている。公明党候補は落選した。
参政党のボランティアに話を聞いた。「あまり議論をするなと言われているんだけど」と言いながら応じてくれた。60代の県内に住む女性だ。外国人の急増を止めるために同党を支援しようと思ったという。「夜、外国人がたむろして怖い。候補の大津さんもボランティア仲間も外国人をやっつけろなんて誰も言っていない。このまま外国人を増やし続けると、日本の姿が変わる」と、危機感を述べた。
川口市に住む50代男性に話を聞いた。自民党にこれまで投票したが、今回は参政党候補に入れる予定だった。「この党は反ワクチンを唱えるなど政策に不安があるし、候補もよく知らない。けれども今の外国人問題を解決してくれる意欲を示す政党に入れる。自民党は何もしてくれない」という。既存政治の不満から、普通の有権者が参政党を支援している。今後、支持者の裾野は広がるかもしれない。
「外国人問題が敗因」の一つ、首相認める
石破首相は参院選翌日の記者会見で、選挙の敗因の一つに「外国人への対応」を挙げた。これまで自民党を支えてきた岩盤保守層が、左傾化した石破政権に反発して国民民主党、参政党、日本保守党に流れた。きっかけの一つが自公連立政権の外国人政策の甘さだった。
外国人問題をめぐる国民に広がる不満と不安を受けて、5月に法務省は「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」を公表。7月には石破首相自ら「外国人との秩序ある共生社会推進室」を内閣官房に立ち上げ、外国人問題に対応取り扱う省庁横断組織を作った。自民党は6月に「違法外国人ゼロ」の選挙公約を打ち出した。
しかしネットを中心に批判が盛り上がり続けた。自民党も石破首相も少子高齢化と労働力不足を理由に、外国人労働者の受け入れを増やす姿勢は変えない。その政策がうまくいかないと国民が見透かしていた。外国人の大量流入は世界各国で問題になり、ナショナリズムを刺激して排外主義を爆発させる材料になりつつある。日本政府の対応の遅れは社会の安定を壊しかねない危険なものだ。
今回の選挙では一部の政党が外国人管理政策の強化を訴えた。特に参政党が「日本人ファースト」のスローガンを掲げた。外国人排斥を唱えるものではなかったが、左派勢力が「差別だ」と反発した。私の見るところ、この攻撃は逆に参政党を目立たせる結果になった。
著しい既存政党への批判
そして埼玉県では既存政党への批判が著しかった。参院選で同県の定数は4だ。今回の選挙で自民と立憲がそれぞれ1議席を確保したものの得票を減らし、公明党、共産党は議席を失い、国民民主党と参政党の候補が当選した。自民党は24年10月の衆議院選挙では埼玉県内で、16の小選挙区で保守系を含め9議席しか当選せず(2人が北関東比例で復活)、落選者を多数出した。公明党はこの選挙で石井啓一代表(当時)が県南部埼玉14区(草加市、八潮市)で落選した。埼玉では外国人問題が選挙に影響を与えている。
参院選の埼玉選挙区で4位で当選した参政党新人の大津力氏の得票数は県南部の外国人問題がある地域では非常に多く、クルド人問題に揺れる川口市ではトップの約4万2千票を集めた。大津氏は選挙戦でクルド人・外国人問題に触れ、「埼玉県民は困っている。際限のない外国人労働者の受け入れに歯止めをかける」と繰り返した。
参政党の勢いは続くのか。評論家の松木国俊氏と話をした。「若い世代には信じられないかもしれないが、言論や政治で語ってはいけないタブー、呪縛が日本にはあり今も残る。GHQのプレスコードを源流とするものだ」と指摘した。そのタブーの中に「外国人問題」「核武装」などがあった。参政党は意図したかはわからないが、政治の場で堂々とそれを議論にした。「まだ残るその呪縛のおかしさを社会に気づかせた歴史的意味がある」という。そうした問題の議論が始まり、広がることで「参政党のことが語られ、今後も注目が続くだろう。言論の自由の回復を期待したい」と、松木氏は述べた。
前向きと後退の動きが選挙後に発生
ただし参政党と大津参議院議員の外国人問題での政策は8月時点で具体的なものになっていない。大津氏に取材を申し込んだところ、党本部の広報担当から連絡が来て、「全議員が研修中なので9月まで対応ができない」と、断ってきた。議員が自らの言葉で語れないのは準備不足であろう。この当選は大津氏の力というよりは、参政党に吹いた「追い風」による影響が大きい。
選挙後、出入国在留管理庁は、クルド人を狙い撃ちにしたかのように、強制送還を進めている。選挙に巻き込まれないように配慮したのだろう。クルド人集住地区に住む川口市民からは「夜の車の暴走や窃盗の疑いなど、迷惑はあまり変わらない」との声の一方で「ほんの少し彼らは静かになった」との意見もある。川口でクルド人の数は減っているようだが、政府が明確な統計を示さないので、実態は不明だ。しかし、問題解決の希望は見えてきた。選挙で、政治と社会は変わるのだ。
一方で、自民党政権は選挙が終わった後で、インド、アフリカからの移民を促進するかのような方針を打ち出している。クルド人問題に希望が見えたら、日本政府は新たな問題を自ら作ろうとしている。これを選挙で、変えなければならない。(この問題の詳細は、別原稿で記載する。)
ただし、選挙における外国人問題の争点化、そして移民制限、違法外国人取り締まりを訴える政党の勢力伸長は今後も続くだろう。
(注・埼玉クルド人問題と、参議院選挙の詳細を取材し、まとめた記事「埼玉クルド人問題から見えた自壊する自民党と躍進する参政党」をHANADA10月号(8月末発売)に寄稿した。ご一読いただきたい。)

石井孝明
経済記者 with ENERGY、Journal of Protect Japan 運営
ツイッター:@ishiitakaaki
メール:ishii.takaaki1@gmail.com
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3 件のコメント
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河合ゆうすけ氏が満を持して新党「日本大和党」を立ち上げました!きっとクルド同様アフリカ、特に既に六本木がマフィアの手に落ち今回木更津をホームタウンとするナイジェリアと戦ってくれるものと確信します。
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ナイジェリアにはあの悪名高い「ボコ・ハラム(Isis・PKKも斯くやのテロ集団)」が居るから心配ですね・・・
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移民反対派のビラを見付けたので貼っておきます。
https://up.gc-img.net/post_img/2025/09/OKBgPg78FRjlFzV_LVNjL_4502.jpeg
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