日本人は「優しさ」で外国人に向き合えるのか?-書評『移民リスク』

目次
ド・ゴールの予言が的中-欧州の変化
「黄色いフランス人、黒いフランス人、褐色のフランス人がいれば、それは素晴らしいことだ。その存在は、フランスがすべての人種に開かれ、普遍的使命を持つことを示す。ただし、その数がほんの少数に過ぎない場合に限られる。さもなければ、フランスは、もうフランスでなくなる」。
政治家、大統領、軍人として生涯「フランスの栄光」を追い求めたシャルル・ド・ゴール(1890〜1970)は、このような言葉を残していると、本書で引用されている。
今ならポリコレ視点でたたかれる発言かもしれない。しかし著者は「不吉な予言の的中」とする。現在のフランスなどの西欧諸国が、彼の言葉通り、移民・難民として流入した大量の中東やアフリカの外国人により国の姿を変えつつあるためだ。各国で、出身国ごとの移民居住地区が形成された。同化する人々がいる一方で、犯罪や治安の悪化なさまざまなトラブルが起きている。
米国での2024年の第二次トランプ政権の誕生も、移民により作られた米国に住む国民さえ、無秩序な移民・難民の流入にうんざりしたことが一因だ。
「移民リスク」発生の可能性
ところが、日本は欧米のこうした移民・難民の大量流入問題が、これから深刻になろうとしている。移民とは本来の居住地を離れ、長期に別の国に滞在する人のことだ。少子高齢化への対応策として日本政府は移民を増やす政策にシフトした。ところが日本政府は、「移民政策はとらない」と詭弁を繰り返す。
欧州のように治安の悪化や文化の衝突で社会が動揺する「移民リスク」の可能性を、日本人は深く考えていない。著者は外国人への日本人の甘さ、優しさを懸念する。
本書では集住したクルド人と住民の軋轢が深刻になっている埼玉県南部、外国人政策の担当者たち、在日クルド人の故郷であるトルコ南部、大量の移民・難民の流入で混乱する欧州、特にドイツを、元読売新聞記者として国際報道の経験が長い著者が歩き、実情を伝える。
トルコではクルド人を理由とした迫害はない。欧州や日本のような民主主義はないが、一応クルド人の国政参加も果たされている。そしてクルド系テロ組織PKKへの警戒は続いている。また欧州では人権尊重の理想論が先行し、問題を直視せずに混乱が広がり続ける。日本が同じ道をたどらないか不安になる。
共生の可能性はあるか
著者は欧州と比較しながら日本の外国人政策の問題を論じる。特定の政治勢力やメディアから人権無視と批判される日本の出入国在留管理庁は、改善の余地はあっても異様な組織ではない。それより一部の悪意を持つ外国人やそうした勢力によって日本人が優しさに付け込まれ、「理想論が国家の基盤を揺るがす」ことや「押し切られる事態は避けたい」とする。
共生の方法は何か。国民のはっきりした意思があれば、島国の日本は「人の出入りを管理することは可能」と著者は述べる。そして国家を健全に機能させる。「受け入れ数は日本の価値体系、制度に統合していくことが可能な範囲に留めることが賢明だ」「外国人がマイノリティーに留まる限り、統合への可能性も開ける」と指摘する。
他の具体策は本書に記されている。私は個人的には、できる限り、単純労働者の移民を入れるべきではない。その結果、日本の経済、社会サービスの規模を縮小させてもいいと考えている。そこが著者と考えの違うところだが、さまざまな国の移民問題の苦しみを観察した著者の提言は今後の日本が参考にすべき視座だ。
石井孝明
経済記者 with ENERGY、Journal of Protect Japan 運営
ツイッター:@ishiitakaaki
メール:ishii.takaaki1@gmail.com
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4 件のコメント
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三好範英氏の本著は当方も購読しましたが 石井さんの先のご著書と傾向が近似しており類書といったところでしょうか
内容は批判的な視点から在日クルド人問題や移民政策を語っており 冷静かつ理知的なトーンで貫かれた好著です
石井さんに対するのと同様に本書にもAmazonでは活動家のような者から中傷まがいのレビューが書かれており つくづく人種が違うと呆れもしますこうした書の警世の論も為政者の耳には届かず 単に労働生産性の維持の為に二枚舌で移民受け入れを拡大していく近年の政権は本当に無責任で 将来の禍根はもとより現在既にある異国/異文化人による社会への秩序破壊さえ直視しようとしません
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在日外国人(中華・クルド)に関して大変ショッキングなニュースを見付けました!
https://news.nifty.com/topics/12311/250507836017/-
皆さん!この名称を記憶しておきましょう。
【MSS(中華人民共和国国家安全部)】
PKKですら少なくとも日本国内では奴らの傘下に有る反日勢力の黒幕です。
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中国からの移民は、ほぼ中国共産党支配を嫌ってやってくる民主派だ。しかしながら国籍は共産党支配のままなのである。つまり、中国共産党という幹や根から派生し伸びていく枝や触手のような存在でしかないのだ。
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