「Colabo不適切経費支出事件」の解説

ジャーナリスト

委託事業に不適切な支出

問題を起こした東京都庁(iStock/blew_i

一般社団法人「Colabo(コラボ)」(仁藤夢乃代表理事)への公金支出をめぐり、東京都監査委員は4日、監査結果を公表した。不適切な経費計上があり、東京都の福祉保健局に対して、経費の再調査を求め、過払いがあった場合には、同法人に返還請求をすることを求めた。

この団体の主催者と応援団が、過激な政治的発言を繰り返し、共産党などの支援があったため、多くの人の反感を集め、ネットで騒ぎになっていた。ただし、メディアは沈黙している。コンテクスト(背景文脈)が多すぎる話だが、報告の内容に絞り客観的にまとめ、私の論評を加えてみようと思う。

私は27年の記者歴でずっと行政文書を読んできたが、行政監査の書類を読むのは初めてだ。ズレた所があるかもしれず、またより問題に詳しい人がいるだろう。それらを参照いただきたいが、この記事は問題を概観する際の覚書として使っていただければと思う。

「東京都若年被害女性等支援事業について当該事業の受託者の会計報告に不正があるとして、当該報告について監査を求める住民監査請求監査結果」の監査概要は1ページだが、本報告は25ページもあって、普通の人が読む暇はないだろう。

監査内容のポイント

ポイントは以下の2点と思う。

1・請求した男性、ネットのハンドルネーム「暇空茜」氏によるコラボの不当、違法な請求があるとした主張の大半は退けられている。

2・監査委員は、支出に不適切な内容のものがあり、報告がおかしいと指摘した。そのため、都に適切な報告を、該当団体に行わせることを求め、不当な支出がある場合は返金を求めた。以下は結論部分を直接コピーしたものだ。

(報告24ページ)

監査請求制度は「いい加減なもの」

以下、感想を箇条書きで述べてみたい。

1・こうした住民の監査請求が認められるのは珍しい。たいてい門前払いになる。これは事業に問題があったということだ。

しかし、この請求は、制度の妥当性を決める、違法性を認定・追及する、正義を実現するという制度ではない。税金支出が正しいかを判断するだけのものでしかない。コラボの批判者が、「腰抜け」「拍子抜け」などとしているが、この結果は仕方がないと思う。そうした制約の中でも、都に正しい請求をださせろと命じる形で、コラボの活動は批判されている。

2・私は監査制度に限界を感じた。問題になっているのは、性暴力や虐待などに遭った女性らに対し、居場所の提供や夜間の見回りといった支援を行うという事業だ。この事業で、女性は救われているのか。この種の支援を求める人は何人いて、どれほど救われ、効果があるのかという根源的な問題には触れていない。東京都議会、都の行政当局は、その点からの検証をぜひしてほしい。

3・この文書を読んで、住民監査制度は、かなりいい加減なものとの印象を受けた。どのような支出があったかの事実を精査するのではなく、書類が適切かどうかの判断が繰り返されている。支出の中身を精査していない。それで暇空茜氏の主張の多くを退けている。制度と検証方法を見直してほしい。

コラボは、なぜ税金を使うことへの感謝がないのか

4・コラボの関係者と弁護士は、前述のポイント1で違法性がないと指摘されたことから「勝った」と主張しているが、それはおかしい。勝ち負けの問題ではない。ポイント2で示したとおり、その行動と支出に問題があるされている。だから反省をし、正しい報告をし、事業を見直す必要がある。

コラボとその関係者の人たちからは、東京都民の税金を使っていることについて、納税者への感謝と事業を行うことへの責任感が全く見えない。それどころか、この人たちのSNSを見ると、批判者への攻撃一色だ。なぜ感謝と反省の言葉がないのか。こうした態度は、人々の信頼を失い、争いが続くだけだ。私はうんざりし、都税を払いたくなくなった。

5・ポイント2では、高額なホテル代やレストラン代など妥当性が疑われる使い方があったと監査委員は指摘している。経理も使い方も杜撰で、コラボは猛省してほしい。

6・監査委員には、小池百合子都知事に近い人、小池知事の与党である都民ファーストの都議会議員が入っている。公正性は大丈夫なのか。

7・監査の結論は玉虫色だ。東京都の責任は、「コラボの行動において不適切な公金の使用がある」こと「報告がおかしい」ことに限られる。一方で、請求者の主張をほとんど認めていないのに、最後のところでコラボに問題があるような前述の文章をおく。明言していないが、コラボが悪いと、読み手に印象を植え付けるものだし、それを狙っているのだろう。

「転んでもただでは起きない」役人たち

ここからは筆者の推測だ。この監査文書は、東京都の事務当局に有利な形になっている。

この団体に対して、左派政治活動をする弁護士、日本共産党、立憲民主党の国会議員や都議会議員が支援に動いていた。以前から、そうした勢力による東京都の担当部局への圧力が強かったようだ。この文書が出たことで、そうした人たちの動きは封じられ、圧力もなくなるだろう。そして、この形の結論では、都政を統括する小池百合子都知事にも、悪影響は及ばない。都の事務当局への批判は最小限だ。さらに、このコラボについて、違法性はない、事業に問題はないとしながら、この文書は批判をしている。都は今後はこの団体を切り捨てやすくなる。そして都の担当者が左遷され、この問題に蓋が閉じられるのかもしれない。

実は私の多少詳しいエネルギー問題でも、似たことがあった。この問題の背景は、リベラル色を打ち出した岸田内閣の旗振りで、男女共同参画予算が2022年度の国の予算で8兆円もついたことにある。誤解が多いが、これまでの予算が、女性の権利拡大の名目も兼ねて二重計上されているにすぎず、予算そのものは大きく増えていない。しかし、その名目で税金が出やすくなったことは確かだ。

同じように1997年の京都議定書が成立した後で、温暖化対策予算が増えた。1998年度に環境NPO予算が、政治的に作られた。3億円だったと記憶している。NPOのことなど当時の環境庁(当時)の役人は知らないため、民間に委託した。ところが、その選定者に、日本共産党系の人物が入り込み、おかしなバラマキをした。

私を含めた記者が気づき、調べ始めた。すると、99年度に環境庁は外郭団体を作り、そこに権限を集め、資金配分を管理した。関係局長と課長は飛ばされ、退職に追い込まれたが、組織として環境庁は失敗を隠し、焼け太りをした。

今回も、東京都は失敗を隠し、転んでもただでは起きないと焼け太りをしているのかもしれない。

税金を払う意欲がなくなった

このコラボ事件は、関係者の姿が奇妙だ。「税金を食べる人」たちの気味悪い動き、ネットワークが見え隠れしている。この事件の関係人物が、いろいろな政治運動に関わり、怪しい政治家が登場し、女性保護をめぐる制度の創設と予算支出を求めている。困っている女性たちが救われるのならば、多少はそうした行動の意味が認められるだろう。けれども、本当にそうした人たちが救われるのか。これまで救ってきたのか。この騒ぎからは、それは見えない。

この団体の代表の女性は、なぜ批判を受けているのかわかっていないようだ。このTwitterの書き込みの文章は、感情を吐露するだけで論理性がなく、攻撃的で、あまりにも幼い。この問題では、普通の日本国民が税金の使い方について批判をしているのだが、そう受け止めていないようだ。ミソジニー(女性憎悪)で語っている人はほとんどいない。

メディアは、4日23時時点でほとんど報道していない。行政報道に強い時事通信が事実を淡々と短く伝えただけだ。この程度の報道に止まるだろう(記事) 私が記事「なぜメディアはColabo問題に沈黙するのか」で予想した通りになった。メディアに正義の実現を求めることは無理そうだ。彼らは面倒なことから逃げている。

焼け太りをする役人。税金を食べる人たち。逃げるメディア。この事件でそれらの姿を見て、私は税金を払う意欲が、またなくなっている。今、政府は防衛費をめぐり増税の検討をしているが、その前に、支出の面でやることがたくさんあると、改めて思う。

ご支援のお願い

14 件のコメント

  1. 中町 より:

    まさにそのとおりだと思いました。
    赤旗やNHKは、全く報道していません。

  2. あたん より:

    既存メディアのご出身で、本件をこれほどわかりやすく解説してくださる方がいることに驚きました。この記事が新聞に載っていたら、と、思わずにはいられません。

  3. 細川 より:

    びっくりするほどちゃんとした記事でした。専門でもないと謙遜しつつ、この一件にどういう問題点があるか、どう改善するべきかまで言及していて、私はこういう記事を欲していたのだと感じました。最近こういう記事が世間で全く見受けられずにニュースを見るのも嫌になり始めたところでした。読んでよかった。

  4. こしあん より:

    分かりやすくまとめていただきありがとうございます。

    監査請求制度がいい加減であるというのは同意見です。
    陳述会で暇空茜さんがあれだけの資料を提出して説明したのに、監査委員のメンバー全員「質問は特にありません」って回答したらしいです。
    (全て理解できていたなら問題ないと思いますが、、、)
    あまり真面目にやる気がなかったのではないかと疑ってしまいますね。

  5. たま より:

    暇空氏は元々Colaboが公開していたF/Sや報告書との矛盾点を指摘していたが
    新たに現れた「表3(資料)」に基づけば暇空氏の主張は取り下げられるべきである、と。

    その表3「自体も」不当な支出が認められるので、裏付ける証憑を2/28迄に出しなさい。
    ザル監査ですね。

  6. たい焼き より:

    税金を投入されている事業という意識がないのは本当にそうだと思います。
    国がするべきことを「やってあげている」という考えが透けて見えていて、仕事を委託されているということがまるで分かっていないようです。
    クライアントからの委託義務で厳しいチェックを受けて報酬をもらい、きっちり税金を納めた結果が、このような人に使われるのだと思うとアホらしく思えてきます。

  7. 正しい日本人 より:

    仰る通り
    正直本気でこの国に税金を納める気が失せてる

  8. 税金を納める都民 より:

    大切なのはこの後、東京都で終わらせず全国にこの監査の動き、公金の横領をさせない動きを広げること。だからこそオールドメディアが必要。このままで終わらせてたまるか。

  9. ん? より:

    共産党はじめとした金食いの道具でしか存在しなかったと。
    これ、第二の正義連やないの。

  10. 中野 より:

    渦中の団体代表女性は公金を扱っている自覚もなく、管理する能力もなさそうなのですが、
    事態を一見複雑にしているのは、「だから管理せずに済む」よう、都庁と自分の左派的互恵グループに認めさせたのではないかということです
    制度的裏付けも政治的裏付けもないこの働きかけが、暇空氏につけいる隙を与え、糊塗することもできない事務的欠陥として不可逆な失点になるとすれば、あまりにも幼稚ではた迷惑なことだと思います

  11. ひで より:

    素晴らしい考察と適格な表現だと感じました。
    本件につき引き続き発信いただけることをお願いいたします。

  12. ヤーサン より:

    色々な事件が起こるたびに、共産党の影が出現するのは何故なんでしょうか?まるで日本の社会を崩壊させようとでもするように。

  13. すーさん より:

    ありがとうございます。
    ネットで世界の国の報道の自由度ランキングを検索すれば日本は先進国の中でブッチギリの最下位です。
    このままにしては絶対いけない問題だと思いますが、大多数の人が知らないのが現実だと思います。その中でこの様な記事は本当に素晴らしい記事でした。

  14. にゃんちゃん より:

    共産党はろくなことやらないな。

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